CREW(クルー)の相乗りコミュニティアプリとUberのライドシェアアプリは全く違ったサービスだった

2017年に日本でスタートした「相乗りコミュニティ」アプリ。

近くにいる登録ドライバーをアプリで探し、自分の好きな場所まで送ってもらうことができる、いわばマイカーを使った人を目的地まで送ってくれるサービスです。

タクシーやバスなどのように運賃があらかじめ決まっているわけではなく、実費以外のサービス料はライダー(乗車する人)自身で0円から値段を決めることができる新しい仕組みです。日本ではあまりなじみがありませんが、サービスに対する謝礼をチップとして支払う感覚に近いものがあります。

ライダーが支払う乗車料金の仕組み

支払う価格を自分で決めることができるというサービスは移動サービスではこれまでにはないサービスでした。

CREWの理念は、「観光客の移動をサポートできなくて困っている」「地元住民の移動手段を確保したい」「新しいテクノロジーを取り入れて交通課題を解決したい」などの声をもとに、公共交通機関の不足部分を補う形で地域の移動手段を解決する手助けをするという目的でサービスを展開しています。

現在、展開地域を東京都内や鹿児島県、長崎県の一部地域(2019年4月時点)でしか利用できないため、やみくもに営業範囲を広げ、”利益追及”のみを目指しているわけではなさそうです。

乗車後にドライバーライダーお互いの評価制度もあり、依頼時にお互いの評判を確認することもできるのです。

このサービスで特徴的なのは、タクシーのようにサービスを提供するドライバーと対価を支払ってサービスを受ける側、という関係ではなく、ドライバーライダーと呼ばれ、対等な立場があることによって成り立つサービスになっています。

相乗りアプリCREWの仕組み

自動車がシェアされる時代、「相乗り」という移動方法はタクシーとは違った新しい人と人のつながり方で、事業者と客という立場からも解放されたコミュニティなのです。

すべての人がお互いを

対等な仲間だと思いながら信頼し、

助け合うことができる

そんな人と人で創り上げていく

社会を創っていきます。

「CREW(クルー)| スマホで呼べる、スマート送迎アプリ」より

サービスの目的はこのように示されており、お互いの認識が同じ位置にあることで成り立つサービスといえるでしょう。

「白タク」行為ではないの?

一部の声であるように、CREWが「白タク」行為になっているのではないか、という点についてですが、CREWは「合法的な」白タクなのです。

というのも、CREWサービスは「有償」ではなく、サービスの提供を受けた者が自発的に支払う仕組みは「好意に対する任意の謝礼」なのです。自家用有償運送で認められたサービスなのです。

道路交通法における登録または許可が必要な場合と不要な場合 違い

相乗りサービスの場合、実費以外にサービスの料金が発生しておらず、サービス料とは違う「謝礼」を受け取ることは「白タク行為」と呼ばれません。よってこの場合、事業者に必要な許可や資格は不要なのです。

白タクと呼ばれる理由 白ナンバーと緑ナンバーの違い

運ぶモノ()が誰の物なのかを基準に、白ナンバーと緑ナンバーが区別されています。白ナンバーは自家用車でも使われるものですが、緑ナンバーは、

  • 他人の需要に応じて
  • 有償で
  • 自動車を使用し
  • 旅客を運送する
  • 事業

のチェック項目がすべて揃っている場合は必ず許可を取らなければなりません。

Uberのライドシェアサービスはこのチェック項目に当てはまっていたため、白タク行為とみなされたのです。

チップ制度のない日本で「サービス料」は支払われるのか?

CREWサービスはあくまでも「任意の謝礼」というかたちでドライバーへの報酬が決まるため、たとえばこの謝礼が常に低い場合、ドライバーはガソリン代や維持のための実費しか得ることができません。

一方でタクシーよりも安く乗車したいライダーは、謝礼を0円から設定できるため、最低限の実費しか支払わない場合もあります。

チップ文化がない日本では、サービスへの相場を知らないことが多く、実際にクルーへの謝礼が0円だったり、遠方までの距離を数百円ということも発生しているようです。

ちょっとした用事や、短い距離で重い荷物を運ぶための移動では、なかなか謝礼の金額を決めきれないことかと思います。

普段、運転しない人にとって自動車の維持費というのはあまり知ることもないため、自分では多いと思って支払っていたとしても、ドライバーにとってはその謝礼が少なく感じたりもします。

謝礼に対してのルールもあまり決まりがないため、質の良いサービスをした分の対価はさほど期待できないようです。ドライバーとクルーという対等な立場でなければ、完全にドライバーが不利な状況に立たされてしまうことになります。

ドライバーが守られる仕組みが整っていない限り、提供する側が一方的に損をすることになるのです。

事故が発生すれば責任ををとり、乱暴なお客様にも遭遇する可能性、さらには相手の評価が完了するまで謝礼の金額もわからないのです。

行き過ぎたサービス・クルーの過剰要求が増えていった場合、ライダーはリクエストに応えなくなり、次第に数が減っていくことになるでしょう。

クルーとして利用する場合でも、自家用車を運転する「一般人」に体を預けるということは、100%安全で信頼できるというわけではありません。事故やドライバーがクルーに対して被害を与えることも絶対発生しないとはいえないはずです。

本来の目的である、移動手段での「不」をなくすため、お互いに存続することを、お互いのメリットとして尊重し合わなければサービスがおのずと縮小していくことがわかります。

Uberとの違い

CREWの解説を行ってきましたが、ここから「ライドシェアサービス」のUberと、「相乗りコミュニティ」CREWの違いを改めて解説していきます。

ずばり、運送行為の実施者(ドライバー)から対価の支払いを求められたものなのか、乗客側の自発的な支払いなのかで意味合いが変わります。

CREWとUberの違いを比較

「ライドシェア」は、タクシーやバス以外の新たな価値を生み出すためのITを生かした先進的なコミュニケーションネットワークを使って、職業の選択肢として存在し、生活を支えるためのものになり得る職業といえます。

もう一方の「相乗りコミュニティ」は「不」に目を向けたサービスで、利用者も一緒にサービスを作っていくという認識のもと、ドライバー・クルー両者で共創していくサービスであるといえます。すべての人がお互いを対等な仲間だと思いながら信頼し、助け合うことができるそんな人と人で創り上げていくサービスなのです。

お金の流れ方や、ITを使ってマッチングさせるという仕組みや手段は大きく変わらないものの、目的などが明確に分かれています。

まとめ

良いサービスというのは提供されるサービスを受ける「お客様」が増えていけばサービスを提供する事業者の規模が大きくなっていくものですが、CREWのように提供する側・受ける側がどちらも同じ立場である場合、双方の需要や供給のバランスを均一に保たなければサービスの継続は不可能といえます。

今後、CREWの相乗りサービスが広がっていった将来、運営の目をくぐり抜けて「見えない」トラブルが発生し、個人が損をしてしまう可能性も考えられます。

CREWが目指す新たな「助け合いの輪」が、どこまで広がっていくことができるのか、今後に期待したいと思います。

要点3つのポイント

  • 相乗りコミュニティアプリCREWは、公共交通機関の不足を補うためのサービス。
  • クルー自身で実費以外の謝礼金額を決めることができる。
  • サービスを受ける側が自発的に任意の謝礼を渡す場合には「白タク行為」と呼ばれない

SNSでもご購読できます。