普段、道路で見かけるタクシーには2種類のタクシー(一般乗用旅客運送運送事業)が存在し、実は違った役割を担っています。
その種類こそがタクシーとハイヤーの違いです。ここではどういった点で異なるのかを解説していきます。
ハイヤーとは
もともとはハイヤーhire=賃借・雇用という意味からそう呼ばれていた完全予約制のサービスで、車内にメーター表示がありません。
出庫してから帰庫までの区間を1営業と数え、乗車中だけでなくその前後の距離・時間も料金に含まれます。

出庫~帰庫までの料金が発生するという点では、レンタカーや貸切バスと同様、時間制になっています。
また、ドライバーは経験を積んだスタッフが勤めており、車種もセダン、クラウン、レクサスといった伝統や格式を重んじる印象をもたせる車が主に使用されます。
目上の人やゲストに対する配慮や心遣いとして手配されることが多いため、車内にはメーター表示がなく、降車時の支払いは行われません。
ビジネスでの接待や役員の移動手段・プライベートでは冠婚葬祭やパーティのゲスト送迎などに利用することで、丁寧かつ手厚い待遇で好印象を与えることができます。
完全予約制の貸切サービスとなるため、道路を走っているタクシーへ乗車するように予約なしで利用することはできません。
タクシーとの違い
タクシーとは、道路上でタクシーに乗車した地点から目的地までの料金を距離・時間に自動計算して金額が発生するしくみになっていますが、ハイヤーは会社の出庫から帰庫までの時間の長さで金額が発生します。
当日予約はあまり行われず、事前問い合わせののち、必要に応じて打ち合わせ(商談)、見積もりなどを確認したうえで成約となります。
最近では、配車アプリなどの普及によりタクシーの予約もできるようになったことから、タクシーとハイヤーの違いがわかりずらくなりましたが、タクシーの本来の目的は移動手段を提供することに対して、ハイヤーは専用ドライバー付きのサービスを提供することになります。
求められるのは、運転業務だけでなく、きめ細かい配慮や秘密を守れる誠実さ、ルールにのっとった運行ができる安定性も求められます。
ハイヤー |
| タクシー |
完全予約制 (電話またはHPより申込) | 配車方法 | 道路上、またはアプリ・電話・HPにて配車予約 |
2時間から1時間単位 または1日以上 | 契約期間 | 実車分(乗った場所から降りた場所) |
メーター表示はなく、口座振込 (クレジット支払いも可能な場合もある) | 支払い | 降車時にメーター表示価格を降車時支払い |
4人~9人乗り(乗務員含む) | 乗車人数 | 4人~9人乗り(乗務員含む) |
ハイヤーの予約
ハイヤーの予約には時間単位での時間契約と1日を超える期間を単位とした常時契約があります。
時間契約
スポット・単発で利用したいときには、1回の利用で2時間以上の単位で時間貸しが可能です。初回2時間の料金は約20,000円の相場で、それ以降になると1時間ごとの時間料金が発生します。
基本的には時間で料金が発生していますが、空港やゴルフ場までの距離をあらかじめ指定する移動用プランとして料金を設定している会社もあります。
完全予約制で場合によっては見積もりが必要となるため、当日予約などは難しい場合があります。
常運送契約
1日を超える期間で車両の専属者として、ほとんどの場合で書面契約を結びます。お客様のスケジュールや目的に合わせて、早朝から深夜まで個人専属ドライバーとなります。
時間でなく終日での契約となるため、運転業務はもちろん、待機の時間、よりくつろげる空間のための整理整頓や気温調整などをしておくことも業務のひとつです。
ハイヤードライバーの事業規模
ハイヤー事業社の数は年々上昇しており、直近の集計データである29年度が事業者数・車両数ともに過去最高となっており、市場規模は少しずつではありますが順調に好調推移しているといえます。
| 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 |
全国事業者数 | 288 | 292 | 301 | 321 | 367 |
全国車両数 | 4,929 | 5,185 | 5,236 | 5,464 | 5,963 |
ハイヤードライバーはタクシードライバーの経験を経てキャリアアップとして選択することが多く、運行管理者資格(国家資格)取得者も多く在籍します。
タクシーのように単発・不特定多数をお客さまとする仕事とは異なり、主要取引先となり得る企業との契約では定期的な依頼が見込まれます。
(多少の増減はあるものの)顧客との信頼関係を築いていくことにより持続的で安定的な売上が保証されるため、売上が見込めるのもこの業種のメリットといえます。
ハイヤー業界 今後の方向性
社用車を経費削減のために廃止する企業が増えているなかで、送迎や移動手段としてのハイヤーは今後も需要は保たれていくものと予想されます。
ハイヤードライバーにとって、お客様へのサービスは顧客の定着化と直結しますが、その質の高さから他のサービス業からの転職希望者も多くいます。
配車アプリなどの便利なIT化による、タクシーの乗車予約できるようになったという点ではハイヤー業界への影響もあるかもしれませんが、ハイヤーのメリットはタクシーとの棲み分けができている点で、同じお客様を取り合うことがほぼないということです。
ハイヤー業からの事業展開としては、そのサービスクオリティの高さやノウハウを活用することで、タクシーハイヤー企業で人材教育のための講習やスキルアップに対するコンサルティングなどの事業を始めている企業もあります。
人で動いている業界だからこそ、新人研修から勤続年数が長いスタッフに対するスキルアップ研修などを継続的に行わなければなりません。
異業種への転換でなく、これまでのノウハウを活用していくことによって、ハイヤー業界の活性化につながっていくのではないでしょうか。