タクシードライバーの求人はいまや人材不足による求人数の上昇や、採用時に年俸制などを取り入れる企業も増加しており、転職市場は引く手あまたの状況になっています。
受ければ受かる採用は受検者のハードルを下げ、志望者にとっても有利な条件で転職活動を進めることができます。

一方で、企業は人材を確保しようとするあまり、転職希望者にとって魅力的な部分しか伝えていないことによって、実際に働き始めてから労働環境の実情や、求人票には載っていなかった見えない制度の実態を目の当たりにするのです。
会社によって異なるシステムが他業界や他社からの転職者には入社後のギャップとなり、違和感を感じたまま働くことになってしまうことにもなります。
そこにタクシードライバーの離職率が20~30%といわれる理由が隠れているのです。
タクシードライバーへの転職活動では、メリットもそうですがデメリットにも目を向け、入社後に後悔ないような転職活動を行いましょう。
ノルマが高くて年収は想定以下…
東京都特別区の平均日車営業収入は50,509円、さらに大阪府地区で30,983円ほどです。(平成29年度)
各社ごとに取り決められているノルマがあり、毎日の進捗が悪ければ、その分の金額が給料から引かれる制度をとっている企業があります。
売上の50%が給与に反映される歩合制システムも、企業によっては日々のノルマを超えなければマイナスになることもあるのです。
目の前の数字に追われて営業することで休憩も十分にとれず、さらに就業時間自体を延ばし残業を行わなければならないような企業はドライバーの事故や違反者が多くなる印象があります。
この違反金は企業側が負担してくれないことがほとんどです。入社を検討しているタイミングで1日あたりの足きり金額といわれる一日当たりのノルマの金額(足切り金額)がいくらのかを必ず確認するようにしましょう。
足きり金額を確認することで、毎日の営業収入を重視する実力主義の企業であるか、ある程度の余裕を持って長期的に働けるような企業なのかを知ることができます。
聞いてなかった!第2種免許の取得が自己負担で毎月赤字に…
タクシードライバーになるには、自動車運転免許第2種免許の取得が必須となります。
教習所によって値段は変りますが、およそ合宿教習で19万円前後~、通学教習で22万円前後~と言われています。決して安い金額ではありませんが、第二種免許取得しなければ職業として就くことができないわけですから、そのための準備も必要になります。
多くの会社では入社してからの研修制度や、受検などのサポートが整っており、免許取得にかかる費用を企業側が負担してくれる制度の導入も進んでいます。
ただ、そこには免許取得後に返済義務が生じる場合もあるのです。
入社時、免許取得のための研修制度、資格取得助成金の支給、といった説明をされて入社したはいいものの、実は2年以上その企業への継続勤務することが条件だったり、または受検費用の全額でない一部や、再受検などで自己負担が発生することもあるので条件をあらかじめ募集要項にて確認しておきましょう。
他の業種でもそうですが、会社通勤にかかる交通費、勤務中に必要になってくる道具代、休憩時の駐車料金などは会社の経費で落ちないことが多いため、想定外の出費は避けたいものです。
年収700万といっていたのに、疲労困憊…プライベートが充実しない!
歩合給と決められている場合には基本給が低めに設定されており、営業収入を増やしていくほど収入の額は増えていきますが、平均的な労働時間で働いていれば平均的な年収に留まることを意味しています。
歩合給を設定している企業は、もともとの基本給を少なく設定しており、日営収入が大きく給料に影響する仕組みになっています。
営業収入を増やしていくほど収入の額は増えていきますが、平均的な労働時間で働いていれば平均的またはその以下の年収に留まることを意味しています。

もし、希望年収を平均よりも高い金額で望むのであれば平均的な労働時間よりも長い時間をかけた働きをしなければなりません。
タクシードライバーのデメリットは、何人乗車しても同じ売上金にしかならないことです。乗客が1人だったとしても、4人でも売上金は同じです。
ドライバー1人当たり1出勤で稼げる金額は、混雑する時間帯での営業も回転率を上げたとしても限界があります。
そのため平均年収よりも多く給料をもらうために、売上を増やしたい場合には1日当たりの勤務時間を増やしたり、出勤日数を増やす、夜勤や残業を行うなどの方法が挙げられます。
タクシードライバーで平均収入より多く稼ぐ人は、平均よりも働く時間を増やしているのです。
そのため、休日は体を休ませるために時間を使っていることが多く、プライベートの趣味や資格取得などの時間を充実させたいと思っている人はこのような働き方は難しいでしょう。
体力勝負でもあるこの業界では、働きすぎによる体調不良などで休職したとしても会社は将来を保障はしてくれません。
理想の年収を保つためには、ある程度の充分な休養が必要になってきます。
もしこういった平均的な収入の状況を変えていきたいのであれば、黒タクを目指して資格取得をし基本給を上げる、または国際タクシードライバーの資格を取得したりハイヤードライバーになるなど、客単価の高い業種へ変更することでキャリアアップをしていかなければなりません。
未経験でも挑める業界だからこそ、良くも悪くもベース(基本給)はほとんど大きな差はありません。資格やスキルの取得は他の人との差をつけるために有利に働きます。
最近では、人材の流出を防ぐという理由でも、積極的に研修制度を整えている企業がふえており、もしそういった給与が高くなるためのキャリアアップを望んでいるのであれば、研修制度の有無や資格の優遇制度も確認しておくといいでしょう。
支払い方法「現金」だけ!?時代に逆流するタクシー業界
東京近郊では配車アプリ普及による多機能カーナビの導入や、決済の電子化などが進んでいますが、実は企業によって大きく差があります。

東京以外の地域ではタクシー配車アプリの導入率はいずれも50%以下でまだまだ導入が進んでいない企業がほとんどです。
配車システムや 電子決済の導入については、電子化がすべてとは言いませんがシステム導入が遅れている企業は、そういったツールに限らず、企業内で使用されている勤怠システムなどの新しいシステムの導入などへの反応が鈍い印象があります。
同じように、車の入れ替え・新しい人事制度の導入などでも同じようなことが考えられます。仕事道具である車種も企業によって入れ替えの年数が異なり、10年以上継続して使用される車と1年未満の車では乗り心地はもちろん、搭載されている機能も違います。
縮小傾向にあるタクシー業界に存在する企業が、変化の多いお客様のニーズを受け止めて適応していくことは大切なことですが、そのための投資ができる企業も実はごくわずかです。
会社へ訪れた際、車庫に駐車されている車種を確認したり、運転試験時に決済方法などを確認しておき、操作方法についても試乗時に確認しておくことが大切です。
IT化なのは見せかけだった…
実はこの現象、最近システム化を導入し始めた企業に多く見られます。システムの部署が発足してまだ間もない企業も要注意です。
これまでのシステムへの知見がない場合、システム開発会社に頼りきりになってしまうことが多く、障害対応が追いつかない、システム化によって逆に時間がかかるようになってしまったなどよく聞く話です。
たとえば、クレジットカード決済時、処理の時間がかかり結果お客様を待たせてしまい文句を言われる…など、本来受ける必要のないクレームを受けてしまうことも考えられます。
面接官は直接、お客様を乗せて営業しているタクシードライバーでないことが多いため、こういった現場の声はなかなか本社へ伝わっていないことがあります。
入社後に、自分が同じ状況にならないために、現役ドライバーと話せる機会がないか面談時に相談してみたり、配車アプリで企業を指定して乗り心地を体験してみてもいいかもしれません。
今はSNSでも企業名を出して営業しているタクシードライバーもいますので、ダイレクトメール(DM)を使って直接質問してみてもいいかもしれません。
まとめ
タクシードライバーを目指すにあたって、メリットの部分だけに目を向けて転職活動をしても、企業によって制度や考え方が全く違っていることがあります。
企業名や規模で自分の入社したい企業を判断するのではなく、普段見えない部分に目を向けることで、より自分が望んでいる働き方を実現することができると思っています。
入社後、後悔をしないためにも気になったところは積極的に質問をして、満足のいく転職活動を行ってください!